Case – 09 帯状疱疹

後藤皮膚科背景イメージ

帯状疱疹は、身体の中に潜んでいた水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)によって引き起こされるウイルス感染症です。

多くの人が子どもの頃に水痘(水ぼうそう)にかかり、ウイルスは体内の神経節に潜んでいます。加齢や過労などが引き金となってウイルスが再活性化し、帯状疱疹として発症します。

1: 帯状疱疹とは

1-1: 症状

一般的に、身体の左右どちらか一方の神経の分布に沿って痛みを伴う皮疹を認めます。はじめは紅斑(赤い斑点)としてあらわれ、その後小さい水疱(水ぶくれ)が出現します。

皮疹が出る数日~1週間ほど前から痛みが生じることもあります。また稀に、免疫が低下している方で、全身に皮疹が拡大する汎発性帯状疱疹となることもあります。

1-2: 原因・メカニズム

1-2-1:ウイルスの潜伏

初めて水痘・帯状疱疹ウイルスに感染したときは水痘(水ぼうそう)として発症します。その後、ウイルスは体内の神経節に潜んでいます(潜伏感染)。

1-2-2:発症

加齢やストレス、過労などが引き金となってウイルスに対する免疫力が低下すると、潜伏していたウイルスが再び活性化し、神経を伝わって皮膚に到達して帯状疱疹として発症します。

1-2-3:合併症、後遺症

一般的な合併症として発熱や頭痛がみられることがあります。

顔面の帯状疱疹では角膜炎などの眼症状や、耳鳴り、難聴、顔面神経麻痺などが生じることもあります。帯状疱疹が治った後にも後遺症として神経痛が長期間残ることもあります(帯状疱疹後神経痛)。

2: 検査法

典型的な帯状疱疹では皮疹の分布や性状から臨床的に診断することが可能です。

他の疾患との鑑別が難しい場合は、ウイルス抗原迅速診断キットを用いた検査を行うこともあります。(ウイルス抗原量が少ない場合は偽陰性となることもあるため、総合的な判断が必要です。)

3: 治療法

治療の基本は抗ヘルペスウイルス薬の全身投与です。ウイルスの増殖を抑えることにより皮膚症状や痛みなどをやわらげ、治るまでの期間を短縮します。

さらに合併症や後遺症である帯状疱疹後神経痛のリスクを減らすことも期待されます。また、必要に応じて鎮痛薬や皮膚の状態に合わせた外用薬を用いることがあります。

重症の帯状疱疹は、入院し点滴加療が必要となることもあります。

4:帯状疱疹の予防

現在日本では帯状疱疹の予防接種として生ワクチンと不活化ワクチンの2種類のワクチンがあり、50歳以上の方は予防接種を受けることができます。(50歳未満であっても帯状疱疹に罹患するリスクが高いと判断される18歳以上の方は不活化ワクチンを接種できます。)

予防接種によって帯状疱疹を完全に防げるというわけではありませんが、その予防効果は高く、重症化の予防も期待できるとされています。

帯状疱疹は50歳以上になると発症率が高くなるため、50歳以上の方はワクチン接種による予防を検討していただければと思います。(※当院では予防接種は行っておりません。)

帯状疱疹は様々な合併症や後遺症のリスクがある疾患であるため、早期に適切な治療を受けることが大切です。帯状疱疹かなと思ったら、お気軽にご相談ください。