Case – 07 多汗症
1:多汗症とは
多汗症には全身の汗の量が増える全身性多汗症と体の一部の汗の量が増える局所多汗症があります。
また、明らかな原因がないものを原発性多汗症といい、発汗部位により原発性全身多汗症と原発性局所多汗症に分類されています。
さらに原発性局所多汗症は多汗の起こる部位によって、顔面・頭部多汗症、掌蹠多汗症(手掌多汗症・足底多汗症)、腋窩多汗症に分けられます。
原発性局所多汗症の診断基準として、局所的に過剰な発汗が明らかな原因がないまま6ヶ月以上認められ、
① 最初に症状が出るのが25歳以下である、
②対称性に発汗がみられる、
③睡眠中は発汗が止まっている、
④1週間に1回以上多汗のエピソードがある、
⑤家族歴がある、
⑥それらによって日常生活に支障をきたす
の6項目のうち2項目以上が当てはまる場合を多汗症と診断します。
2:原因
残念ながらはっきりとしたことはわかっていませんが、交感神経や脳の発汗中枢が関係していると考えられています。
3:検査
基本的に特別な検査は行いません。症状についてお話を伺い、診断いたします。
4:治療法
主な外用薬としては抗コリン外用薬と塩化アルミニウム製剤があります。塩化アルミニウム製剤は全身に外用することができますが保険適用はなく、自家製剤となります。(市販の制汗剤にも塩化アルミニウムを含むものがありますが、濃度が低い分効果も落ちると考えられます。)
腋窩多汗症の外用薬には現在、エクロックゲル、ラピフォートワイプが販売されています。どちらも抗コリン外用薬で、発汗の指令を伝えるアセチルコリンという神経伝達物質を遮断します。また手掌多汗症に対する抗コリン外用薬にアポハイドローションがあります。緑内障や前立腺肥大のある方は抗コリン薬は使用できません。
その他、手の平・足の裏に対してはイオントフォレーシス療法(水道水の入った容器に手足を浸し、電流を流す方法)が保険適用となりますが、当院では施行しておりません。内服薬として抗コリン薬のプロバンサイン(臭化プロパンテリン)や自律神経調整薬のグランダキシン(トフィソパム)などを用いることがあります。
原発性腋窩多汗症に対するA型ボツリヌス毒素製剤の局所注射療法の当院での導入は現時点では未定です。